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2010年5月14日 (金)

さよなら、ロバロバカフェ。

一昨日の水曜日、経堂のすずらん通りにあるロバロバカフェが、幕を下ろした。

地方から東京へ遊びに来た友人にロバロバカフェのことを聞かれるといつも、「東京ではとても貴重な店なんだよ」と説明した。何かを表現したい、感性あふれるものづくり人たちが作品を発表できるスタート地点として貴重だったし、良質なリトルプレスが揃うセレクトブックショップとして貴重だったし、何よりも、ロバロバカフェに行けば、"ぴよちゃん"ことオーナーのいのまたさんがいつもそこにいる、ということがとっても貴重だった。

ある人は何かしらの情報を得るために(例えば取材先を紹介してもらうとか)ぴよちゃんに会いに行き、ある人は美味しいコーヒーをいれてもらうためにぴよちゃんに会いに行き、ある人は暇をつぶすためにぴよちゃんに会いに行くわけだけれど、その誰もが、結局のところは、いつもお母さんのように深い懐で待っていてくれるぴよちゃんに、包んでもらうために行っていたのではないかと思う。

「お母さんのよう」と書いたけれど、ぴよちゃんはお母さんのような押し付けがましい優しさで接してくるわけではなく、どちらかというとドライで、時にはこちらが拍子抜けしてしまうほど、"さっぱり"しているところがある。それは最後まで同じで、店を閉じる直前の一週間は、宝塚のスターの引退公演みたいにたくさんの人がぴよちゃんに会いにロバロバカフェを訪れたけれど、みんながその終わりを惜しむなかで、当のぴよちゃんはやけにさっぱりとしていた。「ぴよちゃん、もうちょっとしんみりしようよ」と、僕は冗談まじりに言ったのだけれど、いつものようにぴよちゃんは、小鳥がきょとんとしたような表情を浮かべているだけだった。

でもさ、 ぴよちゃん。本当はぴよちゃんも、少しはしんみりしていたでしょ? もしそうじゃなかったとしても、その分僕たちがしんみりするからさ。あそこにはたくさんの思い出がありすぎるからね。

経堂駅を出て、決して賑やかとはいえないすずらん通り商店街を入り、どんどん、どんどん歩く。やがて、「本当にこの道であっているのかな?」と不安になるころ、その店は現れる。小さなお店の中には、いつも、眼鏡をかけた店主がひとり…。

ありがとう、ぴよちゃん。さよなら、ロバロバカフェ。

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