手紙の木
カナコさんは今年の4月27日、友達に誘われ、「花市」というイベントに初めて行きました。作家ものの器や布のバッグを持っているカナコさんがきっと好きなイベントだろうからと、友達が誘ってくれたのです。
実際、花市に行ってみると、そこは、カナコさんの好きなものばかりでした。作家さんがひとつひとつ自らの手から生み出した作品は、どれも素晴らしいもので、その日は、ガラスの器と木のカッティングボード、布でできた四つ葉のアクセサリー、それに自家製酵母パンを買いました。
会場を巡っているうちにカナコさんは、たくさんの“手紙”が花のように咲いている一本の木を見つけました。その木の横には、こう書かれた紙が置いてありました。
「この木は手紙の木です。
あなたの書いてくれた手紙を栄養にして成長します。
どうぞあなたの手紙をこの木に与えてください。
あなたが書いた手紙を木にくくり付けたら、
木に咲いている手紙を一通お持ち帰りください。
この木の枝が空に向かって伸びていくように、
あなたと誰かのつながった手が一本の新しい枝となり、
空高く伸びていくことを願っています。」
興味を持ったカナコさんは、その場で一通手紙を書き、木にくくりつけました。そして、木に咲いていた手紙を、一通手にしました。その手紙を開くと、ひと目で女性とわかる文字で、花市に初めてきたこと、手づくりの作品が好きであること、次回もまた来たいということが書かれていました。そして、最後に、名前とメールアドレスとともにこう書かれていました。
「この手紙がどなたの手に渡るのでしょうか?」
家に帰ってからカナコさんは、ドキドキしながら、その手紙を書いた主にメールを送って見ました。カナコさんが手紙を受け取ったこと、自分も手づくりの作家さんが好きなことを書きました。返事はすぐに来ました、彼女はとても感激してくれたようでした。
その後、何度かメールをやり取りしているうちに、同じ路線に住んでいることを知った二人は、一緒にお茶をしたり、買い物に出かけたりする間柄になりました。やがて、友達になった二人は、いまから2か月程前、ある約束をしました。それは、秋のもみじ市に一緒に行こうということ。
カナコさんと彼女は、いまからもみじ市を楽しむ作戦を考えています。会場に着いたら、カナコさんはパンを買い、彼女は焼菓子を買うつもり。そのあとは二人でゆっくり、クラフト作品を見るつもりです。
もちろん、二人を結びつけてくれた手紙の木のことは忘れてはいません。カナコさんは言います。
「今度は河原という場所で、どんな手紙の木になるのか楽しみです」
もみじ市の日、手紙の木を見つけた二人は、きっとまた、まだ見ぬ誰かに向けて手紙を書くのでしょう。もしかしたら、新しい出会いがあるかもしれないと、ささやかな期待を抱きながら。
<手紙の木>
手紙の木は、もみじ市と花市の時にだけ出現する不思議な木です。もみじ市にお越しになったら、ぜひ手紙の木を探してみてくださいね。どこにあるかって? 実は、私たちも知らないんです。手紙の木の場所は、神のみぞ……いえいえ、チームDOM.F..の迫田さんのみぞ知る、です。
*さて続いては、ぜひみなさんに参加していただきたい企画! コトリンゴさんのライブの時に…
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