あんざい果樹園「旬の果物」
取材で訪れた長野県の酒蔵で、興味深い光景に出会ったことがある。麹つくられている「室」の中に入った時、片隅にあるスピーカーからモーツァルトが流れていたのだ。誰もいない小さな部屋の中でなぜ? と不思議に思っていると、案内してくれた杜氏が「麹に“聴かせて”いるのだ」と説明してくれた。発酵中の麹にモーツァルトを聴かせると、とても甘く、まろやかな日本酒が出来上がるのだと言う。実際、その酒蔵が生み出す酒は、極めて上質でふくよかな甘みを感じさせる、極上のそれであった。
あんざい果樹園の果物たちにとって、あんざい果樹園の人々はモーツァルトだと思う。福島の大地で育ったりんごや梨や桃をガブッとかじりついた時の甘美な美味しさは、まるでモーツァルトが紡ぎ出す音楽のごとくそれに触れた者をひとときの幸福に導く安斎家の人々によってもたらされるのだ、と確信している。
4年前、ある雑誌の取材で初めて訪れた安斎家は、父と息子が果樹園を営み、母は器屋を営み、“嫁”がカフェを営むという、ずいぶんと魅力的な“取材対象”であった。実際取材をしてみると、どこを写真に写しても絵になり、たいへん魅力的だったのだが、話をしているうちに、本当の魅力は安斎家の人々そのものなのだと思うようになった。
訪れる者すべてをわが子のように迎えてくれる大らかさ。押しつけがましくない(でもそれはこちらに余計な気遣いをさせないための配慮だと思う)ホスピタリティ。そして、“都会の人”とは明らかに違う自然で、優しい笑顔。
東京から決して近くはないこの場所に(もちろん東京より遠いところからも)、一年中たくさんの人が訪れるのは、cafe in caveを訪れる目的もあるだろうし、器や あんざいを訪れる目的もあるだろうし、果物を買う目的もあるだろう。しかし、結局のところ、みんな安斎家の人々に触れたいのだと思う。迎えられたいのだと思う。
安斎家を訪れた者たちは、安斎家の人々の大らかな優しさと笑顔をいただき、心の中に甘美なる幸福感を宿して帰っていく。あんざい果樹園で育つりんごに宿っているのと同じ、甘くてふくよかな幸福感を。
*あんざい果樹園・安斎伸也さんに聞きました
Q1. 今回のもみじ市では、どんな作品を発表しますか?
100%旬のくだものと、色んな品種の手搾り林檎ジュース。
シンプルですが、僕が育てたくだもの、と、これまた僕が洗って絞るジュース。かなり濃いです。
Q2.「旅と音楽」というテーマに合わせた作品があれば教えてください!
畑にはいつも、音楽と笑いと鳥の鳴き声がありますが、そんな風景を思い描いて、果樹畑に旅する気分を味わっていただきたい。
旅といったら林檎?じゃないですか??
歴史あるフルーツ、世界共通、旅のお供。
そんな、感じを日本でも味わっていただきたい。
袖でガシガシ拭いて、アム、シャキ、ジュワー…。
Q3. 新しい場所で開催されるもみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
河川敷ということで、自然をいっぱい感じれそうで、いつもの自分でいけそうです。ちょっとそこまでキャンプしに…、といった気持ちで参加します。
Q4. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客様にメッセージをお願いします!
すべてのものにはつくり手があります。その、つくり手自身が熱く深い想いを込めた作品をもっての参加です。普段、表に出ない人が集まる市。作品を求めるのもよし、その裏のつくり手チェックに来るのもよし。それぞれの楽しみ方で満喫してください。
*さて続いては、とってもおいしいベーグルを焼く作るあの方の登場です。今回も一日のみの出店なのでお見逃しなく!
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